つわり
つわりとは
つわりとは、妊婦に見られる吐き気、嘔吐、食欲不振などの不快な症状のことです。
妊娠初期(5~6週頃)から見られはじめ、妊娠12~16週頃にはよくなることが多いです。
つわりは妊婦にとってつらいものですが、栄養状態が多少悪くなったからといって胎児の発育には影響を及ぼさないことがほとんどです。ただし、つわりによる体重減少が5%異常に至った場合は、妊娠悪阻とよばれ状態によっては点滴などによる治療が必要になることがあります。
つわりにおける中医学の認識
妊娠悪阻発生の主な発病機序は、衝脈の気の上道、胃失和降にあり、脾胃虚弱と肝胃不和の2つがよくみられます。
1.脾胃虚弱
受胎後は経血が下されなくなるため衝脈の気が盛んになります。
衝脈は陽明に属するため、脾胃が平素より虚していると衝脈の上逆によって胃が侵されます。
胃気が虚して和降機能を失調すると、逆に衝脈の気に随って上衝して悪心嘔吐となってしまいます。
また脾虚により運化機能が失調すると痰湿が内生し、衝脈の気が痰湿を挟んで上逆すると悪心嘔吐を生じます。
2.肝胃不和
受胎すると、胎を養うために陰血が下焦に集まります。
陰血が不足すると肝気偏旺となるが、肝旺体質のもの、また易怒によって肝を損傷していると、肝気はさらに旺盛となります。
肝の脈は胃を挟んでいるため、肝旺侮胃となると胃は和降機能を失調して嘔吐を生じてしまうのです。
東洋一心堂漢方薬局での弁証論治
【脾胃虚弱】
■ 症状
妊娠6~12週以降に、悪心、嘔吐して食欲がない、口淡または清涎を嘔吐する。
疲労感があり眠りたがるなどの症状などがみられる。
■ 治法
健脾和胃、降逆止嘔
■ 処方
香砂六君子湯
(党参、白朮、茯苓、甘草、半夏、陳皮、木香、砂仁、生姜、大棗など)
【肝胃不和】
■ 症状
妊娠初期に酸水や苦汁を嘔吐する。胸満して脇腹が痛む。曖気や溜息をつく。頭脹、眩暈がする。煩渇して口が苦い。
■ 治法
抑肝和胃、降逆止嘔
■ 処方
蘇葉黄連湯加減
(蘇葉、黄連、半夏、陳皮、竹茹、烏梅、茯苓、甘草など)
【気陰両虚】
■ 症状
精神萎糜、身体の消痩、眼窩の陥没、両目に生気がない、四肢脱力感、更に嘔吐が激しくなると、発熱して口渇し、小便が少なく便秘、唇舌乾燥。
■ 治法
益気養陰、和胃止嘔
■ 処方
生脈散合増液湯加減
(人参、麦門冬、五味子、玄参、地黄、陳皮、竹茹、天花粉など)
※上記した脾胃虚弱、肝胃不和のいずれの場合においても、嘔吐が止まらないと摂食に影響を及ぼし、陰液虚損、精気耗散を招きます。