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無月経

無月経とは

無月経とは、文字通り「月経のない状態」を指し、大きく「生理的無月経」と「病的無月経」に分類することが出来ます。

生理的無月経とは、初潮が来る前、閉経後、妊娠中、産後の授乳期などにおける病気ではなく治療を必要としない無月経を指します。

病的無月経とは、本来月経があるはずの性成熟期において異常な月経停止が起こっていることを指します。ここでは、主に病的無月経について説明していきます。

病的無月経には原発性無月経(18歳を過ぎても初潮が起こらないもの)、続発性無月経(月経が3か月以上停止しているもの)があります。続発性無月経の方が頻度は高く、原発性無月経は比較的まれな病態です。

無月経に対する中医学の認識

無月経は中医学では「閉経」といいます。日本語の閉経は中医学では「絶経」といいます。

無月経の病因病機は複雑であり、虚と実に分類されます。

■ 肝腎不足

腎気がまだ盛んになっていない、精気が充実していない、肝血虚少、衝任が十分に栄養されていない、経血に変化するものがない、などの原因により無月経となります。

また多産、流産、過度な性生活、慢性疾患などにより腎精が虚すると、肝血も虚して精血が欠乏します。流れの源を断たれると衝任が虚し、胞宮には下すべき血がなくなって無月経となります。

「医学正伝」では、月経は腎水による変化にすべてを依存しているため、腎水が欠乏すると経血も日を追って乾燥すると解説しており、

また平素より、腎陽が虚していると陽気が到達していないため、陽虚から寒を生じ、虚寒滞血となって無月経に至るとされています。

■ 気血虚弱

もとより脾胃が虚弱であったり、飲食労倦や愛思過度などによって心脾を損傷したりすると営血が不足します。

また大病や慢性疾患、吐血、下血、流産、早産などにより度々出血したり、哺乳機関が長すぎたり、虫積により血を消耗したりして衝任が極度に虚すと、血海が空虚になり、下すべき血がなくなって無月経となります。

「蘭室秘蔵」には「婦人の脾胃の虚が長く続き、また身体が痩せて気血と共に衰えると、経水は断絶してしまう」と述べられています。

■ 陰虚血燥

陰虚体質または出血により陰を損傷し、長期の疾患で血を消耗します。辛燥の食品を過食したために津血を消耗する、などの原因により血海が燥渋して乾燥すると無月経となります。

さらに慢性化して病が重くなると、精が虚し陰が渇き、血海が枯れ尽きてしまい、虚労閉経→無月経へと進行してしまいます。

■ 気滞血瘀

七情によって内傷すると、肝気鬱結を招いて気血瘀滞となります。また月経時や出産時など血室が開く時期に風冷寒邪を感受したり、寒涼によって損傷して体内に冷えを生じたりすると血が寒凝して瘀となってしまいます。

また熱邪が陰血を煮詰めて水分を取り去り、瘀となる。気滞から瘀血を生じ、瘀血から気滞が生じるように、気滞と瘀血は互いに影響しあっているのです。そのため衝任瘀阻となると、胞脈が閉塞されるため経水が閉塞されて無月経となります。

■ 痰湿阻滞

肥満体の人には痰・湿が多いため、痰湿が月経ルートを妨げてしまいます。

また脾が運化機能を失調すると、湿が集まって痰となり、痰湿が衝任を阻滞すると、胞脈が閉じて月経が起こらなくなります。

「女科切要」では「超えた色白の婦人が無月経となり、通じないものは必ず痰湿と脂膜によって憚られている」と指摘しています。

東洋一心堂漢方薬局での弁証論治

【肝腎不足】

■ 症状

18歳になっても初潮がない、または経行後期だったものが次第に量が少なくなって無月経となる。
虚弱体質で腰がだるく下肢に力が入らない。頭暈、耳鳴あり。

■ 治法

補腎養肝調経

■ 処方

帰腎丸加減
(兎絲子、杜仲、枸杞、山茱萸、当帰、塾地黄、山薬、茯苓、鶏血藤、何首鳥 等)

【気血虚弱】

■ 症状

月経が次第に遅れ、量が少なく、経色淡、質薄となり最終的に月経が停止する。
また頭昏そて目がかすみ、心悸がして息が切れる。食欲不振、毛髪に艶がなく抜けやすい。顔色が萎黄。

■ 治法

補気養血調経

■ 処方

人参養栄湯
(人参、黄耆、白朮、茯苓、遠志、陳皮、五味子、当帰、芍薬、塾地黄、肉桂、炙甘草)

【陰虚血燥】

■ 症状

経血が次第に減少して無月経となる。五心煩熱、両頬部の紅潮、盗汗、骨蒸労熱を生じる。
または咳嗽して唾や血を喀出する。

■ 治法

養陰清熱調経

■ 処方

加減一陰煎
(地黄、塾地黄、芍薬、麦門冬、地母、地骨皮、炙甘草、黄精、丹参、枳殻 等)

【気滞血瘀】

■ 症状

数ヶ月間月経がない 精神は抑鬱状態で煩躁して、怒りっぽい。胸脇部が脹満し、下腹部に脹痛があり、拒按。

■ 治法

理気活血、袪瘀通絡

■ 処方

血府逐瘀湯

【痰湿阻滞】

■ 症状

月経が停止する。肥満体型、胸脇満悶、悪心嘔吐して痰が多く、疲労、倦怠感がある。
また顔面や足に浮腫があり、白色の帯下があり量が多い。

■ 治法

豁痰除湿、理気活血調経

■ 処方

蒼附導痰丸合佛手散加減
(茯苓、半夏、陳皮、甘草、蒼朮、香附、胆南星、枳殻、生姜、神麹、当帰、川芎 等)​

無月経でお悩みの患者様へ

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漢方治療において、婦人科疾患を改善するうえで重要な症状の1つが月経にまつわる諸症状を把握することです。

無月経は特に血行障害の程度が重い印象があります。無月経はすぐに治せるという解説があるとしたら、それはあまり現実的ではないと思います。

少なくともまずは数週間から数か月間しっかりと服用を続けてみるといったような、腰を落ち着けた治療が必要です。

また十分な睡眠、適切な運動、バランスのとれた食事、ストレスを良く発散できるような行動を行えば、大部分の方は月経が正常になると期待できます。

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