ED(勃起不全・勃起障害)
ED(勃起不全・勃起障害)とは
勃起障害(ED)とは、性行為において十分な勃起が得られない、または維持できないために満足な性行為を行えない状態のことです。
以前はインポテンツと呼ばれましたが、差別的であることから勃起障害(ED)と呼ばれるようになりました。
日本での勃起障害患者数は1000万人以上いると推計されており、約30万の夫婦において勃起障害の経験があると回答しています。
また勃起障害が男性不妊のひとつであることも判明してきました。
勃起障害の症状は、性交の際に常に勃起が起こらない重度のものから、ときどき、また状況に応じて勃起が起こらないものまで、原因や分類に応じて様々なものがあります。このような勃起障害は性交を完了することが出来ないため、男性不妊の原因になったり、心理的なストレスから抑鬱や不安に陥ったりすることもあります。
ED(勃起不全・勃起障害)の原因
勃起障害は大きく分けて、下記3つに分けられます。
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心固性:心理状態によって勃起できる時と勃起できない時があるもの
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器質性:何らかの病気が原因となって勃起できなくなるもの
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混合性:上記2つの特徴を併せ持つもの
①心固性勃起障害
自慰行為における勃起は可能であっても、性行為のパートナーとなる女性の関係が上手く作れないような場合、また極度の緊張に陥ってしまうために勃起不全となるようなケースです。この障害に陥る原因としては、過去に性行為において失敗した経験がトラウマとなって性交に対する不安が生じたり、パートナーとのトラウマが生じたり、妊娠と子作りの為にかかるプレッシャーが生じたりといったことが挙げられます。
②器質性勃起障害
下記のような勃起に至るまでの一連の流れのどこかに、何らかの病気が生じることによる勃起障害です。
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脳が性的刺激を受けて活発になる
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脊髄を通副交感神経を経て陰茎の欠陥が広がる
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陰茎の血流が増えて勃起する
具体的には、脊髄損傷や脳血管障害などの神経の損傷、糖尿病や外傷などによる血管の損傷、包茎や尿道の奇形(陰茎の異常)などが挙げられます。
③混合性勃起障害
器質性勃起障害で述べたような何らかの病気が原因となって勃起障害が生じるだけでなく、勃起障害が原因となり性交に関する不安やトラウマが生まれてしまうことで、さらに勃起障害が助長されるようになります。
ED(勃起不全・勃起障害)における中医学の認識
勃起障害は中医学では陰痿あるいは陽痿と呼びます。
歴代の医学者は、本疾患の大部分が肝腎、陽明の三経に関係するものと考えています。
ED(勃起不全・勃起障害)の弁証論治
命門火衰
性行為過多や若年時の自慰過多により、精気虚寒・命門火衰となったもの。
■ 症状
勃起不能、顔色晄白、めまい、生気がない、足腰に力が入らない。
■ 治法
補腎壮腰
■ 処方
五子衛宗丸または賛育丹加減を用いる。
心脾受損
思慮過多により心脾を損傷し、気血両虚を招き、陽痿となったもの。
「景岳全君」陽痿篇に「思想・焦燥・憂鬱が度を過ぎたものは、その多くが陽痿になる。陽明は宗筋の会であり…思慮が過ぎれば、心脾を損傷し、病は陽明衛脈に及ぶ。気血は損傷し、陰茎も振るわなくなる」との記述がみられる。
■ 症状
勃起不能、元気がない、睡眠不良、顔色に艶がない。
■ 治法
補益心脾
■ 処方
帰脾湯加減を用いる。
湿熱下注
脾胃虚弱であり、濃厚な味を好む。痰水・湿熱を生じ、湿熱下注によって宗筋弛縦を引き起こし、陽痿となる。
■ 症状
勃起不能、尿量が減り赤みを帯びる。下肢が重くだるい。
■ 治法
清化湿熱
■ 処方
知柏地黄丸加減を用いる。
※臨床で見る限り、腰痿は命門火衰が主であり、湿熱の傾向を持つものはそれほど見られない。
この点は「景岳全君」陽痿篇でも「火衰の者が8割を占め、火盛の者はわずかしかいない」と指摘されている。
このほかに、命門火衰・精気虚寒による腰痿については、羊の睾丸2つに紹興酒を少々加えたものを、毎朝蒸して服用してもよい。1か月を1クールとする。効果が得られても、なお正常に回復しない場合は更に1か月服用してもよい。
なお、服用期間中は性行為に及んではならない。