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更年期障害

更年期障害とは

更年期とは生殖器(性成熟期)と非生殖器(老年期)の間の移行期のことで、卵巣機能が減退し始め、消失するまでの時機をいいます。

更年期は一般的に閉経前後の5年間・合計で10年間をいいます。この時期にのぼせ、ほてり(いわゆるホットフラッシュ)めまい、頭痛、全身倦怠感・不眠等といった身体的な症状、また気持ちの落ち込み・やる気の無さ、不安、憂鬱などといった精神的な症状がみられ、ほかの検査を行っても特に異常が無いものを更年期症状と言います。

これらの症状がひどくなり、日常生活に支障をきたす状態を更年期障害といいます。

更年期障害の症状

1.血管運動症状

のぼせ、顔のほてり(ホットフラッシュ)、発汗、動悸、息苦しさ、疲労感、頭痛、肩こり、めまいなど

2.精神的症状

気分の落ち込み、倦怠感、イライラ、意欲の低下、不眠、食欲減退など

3.身体的症状

腰痛、関節・筋肉痛、冷え、しびれ、疲れやすさ、湿疹、かゆみ、排尿障害、頻尿など

更年期の中医学的概念

更年期障害は、中医学的には五臓の老化と密接に関係しています。

1.腎との関係

腎は人間の発育・成熟・老化を支配しています。

両親から与えられた腎精は「先天の本」であり、「後天の精」により引き続き補充され、陰陽の源として腎に蓄えられ、全身を巡っています。女性の場合は7歳ごとに腎気の働きが活発化し14歳で天癸(ホルモンに相当)が充実して月経が起こり、49際で腎気が衰弱し天癸が絶えて月経が止まります。

(男性は8歳ごとに発育が活発化して、64歳で肝腎虚弱となって更年期の時期に入る。)

その他、虚弱体質・慢性病などが原因で、腎の陰陽虚証を引き起こすこともあります。

2.肝との関係

肝は疏泄を主り、気機を調節しています。また蔵血の働きがあるので、気血の循環に深く関わっています。

ストレスなどが原因で肝気が鬱血し、鬱状態が長引くと、肝火旺盛・気滞血瘀・血虚血瘀などが引き起こされます。

あるいは肝陰不足により肝陽上亢が生じてしまいます。

3.脾との関係

脾は水穀を主って精微物質を作り、気血を生化するところであり、統血を主るはたらきがあります。

脾気虚になると気血不足になり、不正出血などの症状があらわれます。

4.気血との関係

「気は血の師であり、血は気の母である」と中医学では古くからの考えがあります。

女性は月経・妊娠・出産などの生理的特徴から常に血が不足し、気が余る状態になっています。

気は気化作用により、血を作りながら推動作用によって血を循環させています。

血は気に栄養を提供しながら、気をのせて全身を巡っています。

このように気と血は互いに化生し依存する関係を持っているので、病気の時にも互いに影響を与えてしまうのです。

特に更年期には、気滞血瘀が多くあらわれます。

女性の生長、発育、生殖年齢の変化(黄帝内経・素問・上古天真論より)

7歳:腎気盛、歯更り、髪長し

14歳:天癸至り、月事下る、故に子あり

21歳:眞牙生じ長極まる

28歳:髪の長極まり、身体盛壮

35歳:面始めて焦れ、髪始めて堕る

42歳:面皆焦れ、髪始めて白し

49際:天癸渇き、形壊えて子無き

 

上文によると、女性は7年ごとに節目があり、身体や心に変化が起こると捉えています。

28歳で身体のピークを迎えますが、42歳辺りから白髪が生え始めるなど、加齢の兆しがはっきり見え始め、49歳くらいで閉経に至るというわけです。ここから、女性の年齢による体の変化は2000年前も今もそう変わらないことが分かります。

日本で更年期障害によく用いられる漢方薬とその適応障害

1.加味逍遥散

体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩が凝り、疲れやすく精神不安や苛立ちのある方の更年期障害、不眠症などに用いられます。

2.温経湯

体力中等度以下で、手足がほてり、唇がかわく方の更年期障害、不眠などに用いられます。

3.五積散

体力中等度またはやや虚弱で、冷えがある方の更年期障害、不眠などに用いられます。

4.桂枝茯苓丸

比較的体力があり、肩こり、頭痛、めまい、のぼせ、脚の冷えなどのある方の更年期障害に用いられます。

5.温清飲

体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせる方の更年期障害、神経症などに用いられます。

東洋一心堂漢方薬局での弁証論治

【腎気虚証】

■ 症状

足腰がだるい、頻尿、残尿感、夜間の頻尿、生理不順、経血量が少ない、経血の色が薄い、おりものが多い。

■ 治法

益気温腎

■ 処方

帰腎丸加減

(熟地黄、山薬、山茱萸、茯苓、当帰、枸杞子、杜仲、莵糸子、黄耆、党参など)

【腎陽虚証】

※腎気虚証が進行すると腎陽虚証の症状が現れる。

■ 症状

腎気虚証の症状+足腰の冷え、だるさ、疼痛、下痢、浮腫、頻尿。

■ 治法

温腎助陽

■ 処方

右帰丸加減

(熟地黄、山薬、山茱萸、当帰、枸杞子、杜仲、莵糸子、鹿角、肉桂、附子、仙茅、仙霊脾など)

【肝気鬱結証】

※腎気虚証が進行すると腎陽虚証の症状が現れる。

■ 症状

鬱、いらいら怒りっぽい、頭痛、めまい、口が乾燥し喉が渇く、溜息、両脇脹満、食欲不振、生理不順、生理痛、血塊がある。

■ 治法

疏肝解熱

■ 処方

加味逍遥散

(柴胡、当帰、芍薬、白朮、茯苓、甘草、生姜、薄荷、川芎、地黄、夏枯草、麦門冬など)

【肝腎両虚証】

■ 症状

目の疲れ、元気がない、物忘れ、耳鳴り、めまい、のぼせ、ほてり、足腰がだるい、生理不順あるいは閉経、不眠症。

■ 治法

滋陰養血、補腎柔肝

■ 処方

左帰丸加減

(熟地黄、山薬、山茱萸、枸杞子、菟糸子、亀板、鹿角、川牛膝、菊花、芍薬、当帰、沙参、麦門冬、柴胡など)

【脾気虚証】

■ 症状

顔色が萎黄色、疲れ、四肢の倦怠感、痩せ、食欲がない、胃腹脹満、大便溏薄、月経不順、不正出血あるいは閉経。

■ 治法

補脾益気、養血調経

■ 処方

加減心物湯

(人参、当帰、芍薬、白朮、茯苓、炙甘草、陳皮、香附子、牡丹皮)

【気滞血瘀証】

■ 症状

うつ、怒りっぽい、頭痛、イライラ、両脇脹痛あるいは刺痛

■ 治法

疏肝理気、活血化瘀

■ 処方

血府逐瘀湯加減

(当帰、川芎、赤芍、桃仁、紅花、陳皮、枳殻、玫瑰花、地黄、柴胡、桔梗、牛膝など)

付録〛男性更年期障害

最近では「男性更年期」も認識されはじめています。男性の場合は、女性と違って8年ごとに節目があり、体や心に変化が起こります。

56歳前後から男性更年期に入ります。女性と同様、男性ホルモンの低下が原因と考えられています。

しかし女性の閉経のように、劇的な変化ではないので症状に気づきにくいこともあります。

男性ホルモンの減少による更年期症状の場合は主に補腎薬を使います。さらに特に男性の場合、社会的な地位や多忙な仕事、さらに地位や環境の変化などから生じる「うつ」状態を伴う心因的な更年期障害もしばしばあります。

女性に比べ、男性の場合は社会的要因が大きな比重を占めるとされいる所以であります。

この場合は疲労感の改善に補剤や鬱状態の改善をする抗気鬱剤の処方を選択します。

男性更年期障害に効果のある処方例

1.八味地黄丸

泌尿生殖器・腎の機能低下がある場合。腹診では臍より下が軟弱(小腹不仁)であり、四肢の冷感がある場合に用いられます。

2.牛車腎気丸

八味地黄丸に似ているが浮腫や痺れのある場合に用いられます。

3.補中益気湯

仕事や日常生活の疲労感を伴う場合で食欲不振を伴う場合に用いられます。

4.十全大補湯

気力体力が低下している場合に用いられます。

5.半夏厚朴湯、加味逍遥散

心因的な鬱症状が大きい場合、この2つの処方をよく使われます。

東洋一心堂漢方薬局での更年期障害の治療

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更年期障害は肝腎陰虚・腎虚の症状が多いので、滋陰補陽・養血柔筋の治療方法をとり、滋養類の中薬を選ぶことが多いです。

また老化によって脾胃の働きが低下し、気血両虚の症状もよくあるため、補気養血活血の漢方を使います。

また、男女ともに自然に発生する更年期障害の他に、人為的に生じる更年期様症状があります(更年期前に婦人科系の異常により卵巣を摘出した場合など)。

また男性の場合は前立腺がんの治療によるものがあり、女性ホルモンを使用後、女性ホルモンの低下とともに女性更年期障害と同じ様な症状が出現します。

いずれの場合も女性更年期障害に応じて弁証論治したうえで、オーダーメイドでの漢方薬をご用意いたします。

​症状にお悩みの方は是非一度当局へご相談へいらしてください。

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